長戸大幸氏は、90年代にビーイング・ブームを作った方。
80年代のBOOWY(氷室京介、布袋寅泰が所属)、浜田麻里、TUBE、B’z(デビューは88年)、90年代のB.B.クィーンズ、ZARD、T-BOLAN、WANDS、大黒摩季、DEEN、FIELD OF VIEW、小松未歩、2000年代に入っても倉木麻衣、愛内里菜、GARNET CROW等、数多くのアーティストを発掘し、育て、デビューさせ、ミリオン級のスターにしていった。
そして、自身は元々作曲家、アレンジャー、作詞家としてもヒット曲を多数輩出してきている。
編曲すなわちアレンジというのは、非常に大事だ。
出だしでいかにつかむか、そして聴いている人をどれだけ曲の世界に引きずり込むか、これは実はアレンジの内容いかんと言えよう。
長戸大幸氏の編曲の例をあげてみよう。
TUBEは今年デビュー30周年を迎えたが、彼らを発掘、そしてバンドにして名付けてデビューさせたのはもちろんプロデューサー・長戸大幸氏だ。
87年のシングル「Dance With You」(レコード売り上げが振るわない、アイドル全盛の時にオリコン最高位3位は素晴らしい)は編曲も長戸大幸の手によるものだ。
この曲はド頭でスパ〜ンと始まるわけではない。
ベルのフレーズに合わせてピアノのバッキング、ウ〜というコーラスのみでグッと力を貯めて始まる。
どちらかというと「どこに連れて行かれるんだろうか?」という不安感を煽ってくるような感じだ。
ところが一転して9小節目からはバンド全体にブラスも加わって一気に派手になり、聴く者を高揚とさせるのだ。
最初の8小節の何気ないフレーズがあるからこそ、バンドが始まって一気に聴いている人は曲に引きずり込まれていく。
途中からは弦楽器も加わり、米国の探偵物、刑事物のようなスリリングな展開になって、聴くものは迷宮に入り込む。
しかし聴き終わった時に「もう一度聴いてみよう」と思い、繰り返していき、気がついた時にはすっかり曲の虜になっているのだ。
久しぶりに「Dance With You」を聴いてみよう。
今夜は虜になって中々寝付けないかも。
寝付けたら、夢の中では迷宮入りしそうな事件を見事に解決する探偵になっているかもしれない。